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池上彰監修『僕らの未来が変わるお金と生き方の教室』(2023年)

「お金」を考えることは「生き方」を考えること①

私は中学校の社会科の教員としてこれまで様々な内容について,生徒ともに考えてきました。

将来生徒たちが社会の中で生きていく上で,「お金」について学ぶことはとても大切だと思います。

唐突ですが私の両親の話をします。

私の両親はあまり散財することなく、貯金を中心に身の丈にあった生活をしてきました。

その様子を見て育った私も同様に、あまり散財することなく生活しています。

その一方で、自分が必要だと感じた「ここぞ」という時には惜しむことなくお金を使います。

それは「誰かを喜ばすこと」だったり、「長期目線で考えたときに、価値を感じるもの」だったりします。

しかし、自分の身のまわりを見ていると、「~歳になったからそろそろ〇〇を買わなければ」という先入観に囚われてお金を使っている人が多いなと思うのです。

本来、「お金」は自分なりの軸をもとに、貯めたり、自分やその周りの人たちの生活をより良くするために使ったりするものだと思うのですが、自分や周囲の先入観に従ってお金を使った結果、後々の自分が苦しむ結果を招いている人も見受けられるのです。

このように、大人でも迷わされている「お金」について考える、多様な考え方に触れることのできる本があります。

それが今回紹介する、池上彰監修『僕らの未来が変わるお金と生き方の教室』(2023年)です。

〇この本の目次

・第1章 お金とは何か?

・第2章 お金と世の中のしくみ

・第3章 私たちの生活とお金

・第4章 上手なお金との付き合い方

・第5章 世界と日本の問題を知ろう

・第6章 未来あるあなたへ伝えたいこと

上記の内容が、オリジナルの漫画のストーリーとも関連しながら展開されます。

〇各章の感想

・第1章 お金とは何か?

印象に残ったフレーズ①

「人がする仕事はすべて世の中に価値をつくりだしているのです。すべての価値あるモノ(商品・サービス)は、人が働くことで生み出されます」

「「いいな」と思うものにお金を使い、「よくないな」と思うものにはお金を使わない、それが繰り返されることによって、世の中は少しずつ変わっていくのです」

→「労働」や「お金を使うこと」は社会で循環します。

消費者の選択は社会に大きな影響を与えるのです。

最近は不正を働いた中古車販売店のことがニュースをにぎわせています。

「お金を使うこと」は、消費者の投票行動でもあります。

企業は消費者に価値を提供します。消費者は「より価値を感じる企業」にお金を使います。

消費者による「お金を使う」という投票行動は、企業に大きな影響を与えます。

企業は消費者に選ばれる「より価値を感じる企業」になるため、消費者の生活をより良くする財やサービスを提供しようと努力したり、より労働者や環境に優しい企業になろうと努力をしたりするからです。

これは、消費者が「自分たちはどのような社会で生きたいか」を考えて消費行動をすることで、企業は消費者の思いを実現しようとしてくれる、ということでもあります。

言い方を変えると。消費者が何も考えず消費という投票行動を行った結果、良くない企業が放置される可能性があるということでもあります

「お金をどのように使うか」を考えることは、「自分たちはどのような社会で生きたいか」を実現することにつながるのです

印象に残ったフレーズ②

「私たちが無料でサービスを受けられるのは、こういった広告や宣伝があるからなのです。」

「苦労をして作品を世に送り出した人たちが報われないのは、正しいことではありません。」

→インターネットの普及などにより、無料で楽しめるコンテンツが社会にあふれています。

「なぜこれが無料で楽しめるのか?」と考えることは、ビジネスの仕組みを考える上でとても大切なことだと思います。

「広告」というのはビジネスにおける偉大な発明だと思います。広告料を取ることによってインターネットの検索エンジンやSNSを多くの人たちが無料で楽しむことできます。この「広告」という営みを通じて、広告に関する企業は多くの富を得ながら、人々に安価もしくは無料のサービスを提供できています。

一方で、2022年の「スラムダンク」の映画や、2023年の宮﨑駿『君たちはどう生きるか』などは広告をほとんど行わずとも、口コミを通じて作品の存在や意義が広まり、大ヒットを記録しています。「広告」というものの「存在意義」について考えさせられました。

さて、私たちが住んでいる日本という国では、賃金の上昇ペースが他国より鈍いことや、国際的な物流の鈍化と円安を背景とする物価の上昇により生活苦が見られます。

インターネットの普及で、今後も安価もしくは無料で楽しめるサービスは重宝されるでしょう。

そのような中だからこそ、消費者の立場だけでなく、財やサービスを生み出すクリエイターの立場になることも大切なのだと思います。

安価や無料がもてはやされる一方で、クリエイターたちに適切な報酬が払われないのでは、今後消費者を楽しませてくれる財やサービスが生み出されないかもしれません。

日本の産業において、例えば、世界を席巻する「アニメ」にたずさわるアニメーターの方たちの労働環境の悪さが問題となっています。

日本の優秀なアニメーターたちが、円安も手伝って外国のアニメの企業に引き抜かれているという実態があると言うのです。

安価や無料を求める消費者の態度が、巡り巡って自国の産業の弱体化を招いたり、自分たちの生活に価値を与えてくれる営みを自分たちで減らしたりすることにつながるかもしれないのだと、学びを得ることができました。

以上のように、本書は「お金」について考える良いきっかけになるとともに、「自分はどのような社会に生きたいか」を考える良い題材になると思います。

今回はまず「第1章 お金とは何か」で印象に残った内容を紹介しました。

学びが多い本なので、今後も各章を読んで考えたことを発信していきたいと思います。

最後までお読みくださりありがとうございました。