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おかざき真里『阿・吽』日本仏教の二人の創始者

教育×まんが

私は社会科の教員として歴史を生徒に教えています。生徒たちに歴史を教える土台として,漫画で学んだことが大変役に立っています。

そこで、これまで私が読んできた漫画の中で、歴史学習につながったな、たくさんの方に読んで欲しいな、というものを紹介していきます。

本日8月11日は「山の日」ということで、日本の山岳信仰に大きな影響を与えた、「最澄」と「空海」という二人の僧が活躍する、おかざき真里『阿・吽』を紹介します。

〇作品に登場する主な歴史上の人物・歴史上の出来事

以下に本作に登場する歴史上の人物と関連する歴史上の出来事を紹介します。

ストーリー内では、実際の歴史上の人物や出来事をもとにアレンジされています。

どこがどう異なるか調べてみるのも、歴史の勉強になると思います。

参考にしてみてください。

・最澄(さいちょう)

…平安時代初期の仏教の僧。

遣唐使とともに当時の中国である「唐」に渡り、「天台宗」(てんだいしゅう)という当時の日本ではまだ広まっていなかった、新しい仏教の宗派の教えを学びます。

帰国後は比叡山(ひえいざん。現在の滋賀県)に延暦寺(えんりゃくじ)を創建し、「天台宗」を日本に広める拠点としました。

・空海(くうかい)

…平安時代初期の仏教の僧。

遣唐使とともに当時の中国である「唐」に渡り、帰国後は「真言宗」(しんごんしゅう)という新しい仏教の宗派の教えを広めました。

また、高野山(こうやさん。現在の和歌山県)に金剛峯寺(こんごうぶじ)を創建し、「真言宗」を日本に広める拠点としました。

・桓武天皇(かんむてんのう)

…奈良時代末期~平安時代初期の天皇。

桓武天皇は2つの事業を行ったことで有名です。

〇1つ目は、平安京への遷都です。

桓武天皇は、奈良時代の平城京から長岡京への遷都を計画しますが失敗してしまいます。

その後、794年に平安京に遷都しました。

中学校社会科では、桓武天皇がなぜ遷都する必要があったのかを学習します。

奈良時代、聖武天皇による東大寺の大仏づくりを経て、仏教の僧侶が政治に口出しすることが増えました。

その中で、道鏡という僧侶にいたっては、「法王」(ほうおう)という仏教界での最高位を得た後、天皇の地位につこうとすらしました。

このような、奈良の仏教勢力から距離を取り政治への介入をしづらくするため、平安京への遷都が実施されたのです。

〇2つ目は、東北地方の蝦夷の征討です。

桓武天皇が活躍した時代、東北地方には朝廷の言うことを聞かない「蝦夷」(えみし)と呼ばれる人たちがいました。

桓武天皇はこの蝦夷を服属させようと、軍勢を送り込みます。

蝦夷を征討しようとした理由としては、

・当時の東北地方では、「金」が採掘できることが知られており、この金を手に入れようとしたということ

・朝廷に服属しない蝦夷を征討することで、天皇である自分の権威を高めようとしたということ

など。様々な事情がありました。

・坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)

…桓武天皇が蝦夷の征討のために、「征夷大将軍」(せいいたいしょうぐん)に任命した人物です。

征夷大将軍は後の時代の源頼朝以降、武家政権のトップの人物が任命される役職になっていきますが、平安時代初期には、「蝦「夷」を「征」討する大将軍」という意味合いで任命されていました。

彼は京都の「清水寺」(きよみずでら)を建立したことでも有名です。

・アテルイ(阿弖流為 とも)(本作では名前のみ登場します)

…蝦夷のリーダーとして、坂上田村麻呂と何度か戦った後、田村麻呂から命を助けることを条件に降伏。田村麻呂はアテルイらを中心に、朝廷による東北地方の統治が行われることを画策したと言われていますが、桓武天皇は田村麻呂のアテルイ助命嘆願を退け、アテルイは処刑されてしまいました。本作での田村麻呂は、終始アテルイのことを引きずりながら余生を送っている様子が描かれます。

田村麻呂が建立した清水寺には、1994年に有志の人たちによってアテルイらを祭る石碑がつくられました。

〇平安時代を学ぶ題材としての『阿・吽』のすすめ

本作『阿・吽』は、上記の人物たちの思惑が絡まり合いながら、作者のおかざきさんのとても印象的なまんがの絵とともに、ストーリーが進んでいきます。

歴史の教科書では、「最澄」と「空海」は名前や事績がある種無味乾燥に掲載(学問という性質上ある程度仕方ないですが…)されますが、この二人の人物がどのような人物だったか、まんがならではの脚色がとても興味深かったです。

最澄は人々を救い、仏教を広めることに誠実に取り組む、大変真面目な人物として描かれます。その真面目さ故に、多くの悩みを抱えながら一生懸命に自分の道を進みます。その健気さに心打たれます。

一方の空海は、天才肌で仏教の教えを吸収して自分が成長していくことを純粋に楽しむ人物として描かれます。

ドラゴンボールで言うと、孫悟空みたいな…笑

経典を読んだ後に「おれはもっと欲しい!!」的な、彼の獣のようなまなざしからは、自分の信じるものを極めようとするひたむきな姿勢を感じ、見ていてとてもスリリングです。

この二人は、桓武天皇や後の時代の政治家たちの抗争に巻き込まれつつも、それでも各々の道を究めていくのです。

〇最後に

最澄の「より多くの人たちを救いたい」という思い、空海の「もっと真理を探究したい」という思い、怨霊におびえながらそれでも生きることに執着する桓武天皇や、アテルイのことを後生引きずる坂上田村麻呂…。

どの人物も大変魅力的に描かれています。

この作品からは、平安時代初期の歴史だけなく、この作品の人物たちから「人間とは何か?」という学びも得ることが出来ます!

まんがで歴史を学ぶことは、歴史をただの文字の羅列ではなく、その時々の時代を人々がどのように生きたのか、イメージを持つことにもつながります。

興味を持ってくださった方は、是非お読みいただければと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!