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石ノ森章太郎『マンガ日本の古典1 古事記』(1994年)

〇教養としての日本神話

今回紹介するのは、石ノ森章太郎『マンガ日本の古典1 古事記』です。

前回紹介した『火の鳥 黎明編』と『火の鳥 ヤマト編』を読んでいて、「多分、神話と関係するんだろうけど、あんまり分からないなあ」と思う場面が多々ありました。

かと言って、日本神話に関する難しそうな書籍に目を通すのもハードルが高い。

「そうだ!これも漫画があったはず!」と思い立ち、久しぶりに読んでみたという次第です。

〇作者の石ノ森章太郎について

この本の作者、石ノ森章太郎さん(以下、「石ノ森氏」)は、私と同郷である宮城県の出身です。

手塚治虫のいちファンからアシスタントとなり、日本初の長編アニメ『鉄腕アトム』のスタッフとして活躍しました。

その後『サイボーグ009』や、かの有名な『仮面ライダー』シリーズを生み出しました。

宮城県内にある登米市(とめし)の旧中田町(なかたちょう)には生家が残され、記念館が近くにありますし、彼が良く通った映画館のあった石巻市には、「石ノ森章太郎漫画館」もあります。

宮城県出身の私にとって、郷土の自慢となる人物の一人です。

『マンガ日本の古典1 古事記』について

この作品は、1994年に出版されました。あとがきにある通り、当時の石ノ森氏は『マンガ日本の歴史』シリーズ全55巻(こちらもいつか紹介したい)を書き終えた直後。

かなりのハードスケジュールの中執筆されたようです。

彼は『マンガ日本の歴史』シリーズについて「歴史はマンガ的であっても、マンガではない。マンガ的につられて、マンガ的発想を展開し、本当のマンガにするわけにはいかない」と、当時のプレッシャーについて語っています。

一方で、こうも述べます。

「そこへいくと、『古事記』上巻は、確たる原本が存在するとはいうものの、自由に″漫画家的発想″で処理できた。」

つまり、石ノ森氏にとって、日本神話は既にまんが的な要素を備えたものだと捉えているということが分かります。

このような捉え方は、戦前に皇国史観を学んだ世代からすれば受け入れがたい部分もあるのかもしれませんが、1990年代当時にはすでに、日本神話をシニカルに見る向きは許容されたということかしら。

〇まんがの内容について

神話を暗唱したとされる「稗田阿礼」(ひえだのあれ)から、「太安万侶」(おおのやすまろ)が聞き取った内容を記録するシーンからはじまり、神話と太安万侶(時に石ノ森氏)のツッコミを交えながら、真面目な注釈もついて物語は進んでいきます。

これがなかなか読みごたえがあります。

描かれる内容は主に、

・イザナギとイザナミの「国造り編」

国産みや、イザナミが「黄泉の国」(よみのくに)に行く話など

・天照大御神(アマテラスオオミカミ)と建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)の姉弟篇

アマテラスとスサノオの仲たがい。

「天の石屋戸」(あめのいわやど)の話。

スサノオが「高天の原」(たかまのはら)から追放され葦原の中つ国(あしはらのなかつくに)に行く話。

スサノオがヤマタノオロチを退治して「草なぎの剣」(くさなぎのつるぎ)を得る話。など

・根の国篇

大国主神(オオクニヌシノカミ)が因幡の白兎(いなばのしろうさぎ)と出会い、ヤガミヒメといい感じになる。

オオクニヌシが自分の兄たちに殺されかけるも母に逃がされる話、逃げた先でスサノオの娘スセリビメと結ばれる。

因幡のヤガミヒメとも結ばれるも、スセリビメにいびられヤガミヒメが帰ってしまう。

オオクニヌシの活躍により葦原の中つ国が繁栄する。など。

・神々の降臨篇

建御雷之男神(タケミカヅチノヲノカミ)が高天の原から葦原の中つ国に降り立ち、オオクニヌシを襲撃。

オオクニヌシは「私はスサノオにオオクニヌシになれと言われただけ。アマテラスが国を譲れと言うならゆずる。

立派な隠居所(出雲大社?)をつくってね」と返答。

アマテラスオオミカミの孫であるニニギが、猿田彦(サルタヒコ)の案内のもと高天の原から葦原の中つ国の高千穂の峰(たかちほのみね)(実際に宮崎県にある地名)に降り立つ。その際に、三種の神器である八咫鏡(やたのかがみ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)、草薙の剣(くさなぎのつるぎ)を持たせる。

ニニギの二人の子、海サチビコと山サチビコの対立。

神武天皇の誕生。など。

〇まとめ

まんがを読んでいても「取り止めがないなあ」と感じるので、原典となる古事記の記述はもっと分かりづらそうです。

印象に残ったのは石ノ森氏のツッコミ。

イザナミが火の神の炎で負傷し亡くなりそうなときに、イザナミが苦し紛れに吐いたゲロや大便、小便などから様々の神が生まれたのを見て、

「今にも死にそうだというのにまだ神造り…!日本人は神代のムカシからワーカーホリックだったんだ…!」

このシニカルな視点がたまりませんね。

私も過労にならないように気をつけなくちゃ…。

さあ、何にせよ、『古事記』や『日本書紀』に記載される日本神話は『火の鳥』に限らず様々な漫画やアニメ、ゲームにもインスピレーションを与えています。

原典よりもまだよっぽど分かりやすいし、イメージしやすいはず。

これが漫画の良さです。

これを機にぜひ手に取ってもらえればと思います。